この展覧会は、主に三つの要素でできていて、そのうちの一つが「こどもたちによる土ねんど作品展」です。明倫小学校の一角をスタジオにしていた椎名さんが「いつもこどもたちが僕の作品をみてくれているので、今度は僕がこどもたちの作品をみてみたい」との一声から動き出したプロジェクトです。
校長先生に相談してみると、お忙しい時期にもかかわらず、快く受け入れてくれました。校長先生の中でも陶芸そのものや工程をこどもたちが「体験する」ことに、共感を得てくれたようです。
土ねんどは学校の教材から用意し、椎名さんは全学年のクラスを訪ね、彫刻や土ねんどづくりの技術のレクチャーをしました。紙粘土と違って、土ねんどだからこその難しさ、そのテクニックを伝えます。
そのあと、地元の陶芸作家(赤瓦十一号館陶芸館)の協力によって、電気釜で焼いた後、NPOのスタッフに『野焼き』を行い、完成しました。
こうして出来た150個近いこどもたちの作品が展覧会に並んでいます。足や手、頭などの部品はないものもありますが、それは壊れていて一見失敗という風に見えますが、そういうわけではありません。椎名さんはこどもたちや先生に向けて朝礼のときにお話しました。「みんなの作った作品は、焼いたことによってところどころの部品がなくなっていたりするけれど、昔の彫刻も同じようにこわれていても、ない部品をあるものとして、美術館や博物館で大事に価値のあるものとして残されている。こわれていても彫刻作品の美しさは変わらない。だから、お家の人にもそう伝えてください。」
私たちは、壊れてしまったり欠けてしまうと、失敗と思ったりある基準に比べて価値がないように思いがちですが、そうではない。ないものをみる視点を教えてくれた彫刻家らしい、メッセージでした。